Clash Meta から Mihomo へ:旧版 Core からの完全移行チュートリアル
なぜレガシー Clash Core から Mihomo へ移行すべきか
2022 年以前にリリースされたオリジナルの Clash Core(Dreamacro 氏がメンテナンスしていた版)をいまだにお使いの方は、本稿を手元に置いておく価値があります。上流の Clash プロジェクトは 2023 年 11 月に公式にアーカイブされ、GitHub 上のリポジトリは読み取り専用となりました。つまり、セキュリティパッチやバグ修正、新機能の提供は今後期待できません。
一方で、プロキシまわりのプロトコルは急速に進化しています。VLESS + REALITY、Hysteria2、TUIC v5 など、次世代の方式を採用するプロバイダーが増えており、これらはレガシー Clash Core ではそもそも扱えません。ノード一覧に「接続失敗」「未対応のプロトコル」と並ぶ場合、カーネルが古いことが原因である可能性が高いです。
Mihomo(旧称 Clash Meta)は、いま最も活発に開発されている Clash 系カーネルのフォークで、MetaCubeX チームが継続的にメンテナンスしています。既存の Clash 設定構文との後方互換性を保ちつつ、REALITY、Hysteria2、TUIC v5、Shadowsocks 2022 などへのネイティブ対応を追加し、旧ビルドに見られたメモリリークや接続の不安定さの多くも解消されています。Clash ライクな体験を最新のまま維持するうえで、Mihomo への移行は最も現実的な選択肢です。
名称について:Mihomo は 2024 年のリブランディング以降の正式名称です。ドキュメントやクライアント画面では「Clash Meta」「Meta Premium」と表記されることもありますが、いずれも同一プロジェクトを指します。混同する必要はありません。
アップグレード前の準備
作業に入る前に、次の項目を 5 分ほどで済ませておくと、データ消失や設定破損のリスクを大きく下げられます。
ステップ 1:既存の設定ファイルをバックアップする
Clash の設定は通常 config.yaml という名前で、次のような既定パスに置かれます。
- Windows:
%USERPROFILE%\.config\clash\、またはクライアントのデータディレクトリ内のprofiles\フォルダー - macOS:
~/.config/clash/ - Linux:
~/.config/clash/
フォルダーごとデスクトップなど安全な場所にコピーしておきましょう。万が一の際に旧設定へ戻せる、いちばん重要な保険になります。
ステップ 2:利用中のクライアント種別を把握する
Mihomo 本体はコマンドラインプログラムです。多くのユーザーは、GUI クライアント経由で間接的に利用しています。
| クライアント | プラットフォーム | Mihomo 同梱 |
|---|---|---|
| Clash Verge Rev | Windows / macOS / Linux | あり(既定で Mihomo) |
| FlClash | Android / Windows / macOS | あり(内蔵) |
| Clash for Windows(旧) | Windows | なし(手動でカーネル差し替え) |
| ClashX / ClashX Pro(旧) | macOS | なし(手動でカーネル差し替え) |
| OpenClash | OpenWrt | Meta カーネルを別途取得 |
すでに Clash Verge Rev や FlClash をお使いなら、クライアントを最新版に保つだけで十分です。手動でカーネルファイルを入れ替える必要は通常ありません。
古い Clash for Windows や ClashX を使っている場合は、以下の手順でカーネルまたはクライアントごと移行します。
Windows:Mihomo カーネルの差し替え
Windows での作業は「ダウンロード → ファイル置換 → クライアント再起動」の 3 段階に分けられます。
ステップ 1:Mihomo カーネルを入手する
Mihomo の GitHub Releases を開き、最新リリースの Assets から環境に合うファイルを選びます。
- 64 ビットの Intel / AMD(ほとんどの PC):
mihomo-windows-amd64.zip - ARM 系 CPU(Surface Pro X など):
mihomo-windows-arm64.zip
展開すると mihomo-windows-amd64.exe が得られます。
ステップ 2:カーネル実行ファイルを置き換える
クライアントごとに配置場所が異なります。
- Clash for Windows:インストール先の
resources\static\files\win\x64\にあるclash-win64.exeを、入手したmihomo-windows-amd64.exeで上書きし、ファイル名をclash-win64.exeに揃えます。
必ずクライアントを終了してから操作してください。実行中の実行ファイルを上書きしようとすると、ファイル使用中エラーで失敗します。タスクトレイのアイコンから完全終了してから置き換えましょう。
ステップ 3:再起動して確認する
再度クライアントを起動し、設定やバージョン情報にカーネル名として Mihomo や Meta が含まれるか確認します。ログパネルに Mihomo 由来の起動ログが出ていれば、差し替えは成功しています。
macOS:新しいクライアントへの移行を推奨
macOS では、旧 ClashX の中身だけカーネル交換するより、Mihomo を最初から同梱した現行クライアント(例:Clash Verge Rev)へ乗り換える方がトラブルが少ないです。ClashX 自体も更新が止まっており、カーネルだけ新しくしても GUI 層で不整合が出やすくなります。
ステップ 1:サブスクリプション URL を控える
ClashX の設定画面から、プロバイダーから渡された https:// で始まるサブスクリプション URL をコピーして保存します。ローカルの YAML のみを使っている場合は、そのファイルをバックアップします。
ステップ 2:新しいクライアントをインストールする
当サイトのダウンロードページから、お使いの Mac に合うビルドを選びます。
- Apple Silicon(M1 / M2 / M3 / M4):ARM64(Apple Silicon)向け
- Intel Mac:x64 向け
初回起動時にゲートキーパーが表示されたら、システム設定 → プライバシーとセキュリティから「このまま開く」などで許可します。
ステップ 3:サブスクリプションを取り込む
新クライアントの「サブスクリプション」または「プロファイル」画面で URL を貼り付け、インポートまたは更新を実行します。ノード一覧が表示されたら、任意のノードを選んで利用を開始できます。
新クライアントは既定で Mihomo を使うため、REALITY や Hysteria2 などの新方式ノードも追加設定なしで動きます。プロバイダー側がサーバーを刷新済みであれば、体感速度の改善も期待できます。
設定ファイル移行時の注意点
Mihomo はレガシー Clash Core の構文と高い互換性があります。そのため多くの既存 config.yaml は無改変のまま読み込めます。ただし、項目ごとの挙動差がそのまま「移行後の不具合」につながることがあります。
主な設定の違い
| 項目 | 旧 Clash Core | Mihomo(Clash Meta) |
|---|---|---|
| 外部コントローラー | external-controller: '0.0.0.0:9090' |
構文は同様で互換あり |
| TUN モード | 非対応または限定的 | フル対応。tun: ブロックが必要 |
| Shadowsocks 2022 | 非対応 | ネイティブ対応。cipher: 2022-blake3-aes-256-gcm などを指定 |
| VLESS + REALITY | 非対応 | ネイティブ対応。reality-opts: などを追加 |
| Hysteria2 | 非対応 | ネイティブ対応。type: hysteria2 |
| DNS | 基本的な設定のみ | fake-ip-filter、direct-nameserver など拡張オプションあり |
Mihomo 向け最小構成の例
以下は Mihomo で問題なく読み込める最小限の config.yaml の例です。既存設定を整理する際の参考にしてください。
YAMLmixed-port: 7890
allow-lan: false
mode: rule
log-level: info
ipv6: true
external-controller: '127.0.0.1:9090'
secret: ''
dns:
enable: true
ipv6: false
enhanced-mode: fake-ip
fake-ip-range: '198.18.0.1/16'
nameserver:
- 'https://doh.pub/dns-query'
- 'https://dns.alidns.com/dns-query'
fallback:
- 'https://cloudflare-dns.com/dns-query'
- 'tls://dns.google'
fallback-filter:
geoip: true
geoip-code: CN
tun:
enable: false
stack: system
dns-hijack:
- 'any:53'
auto-route: true
auto-detect-interface: true
proxies: []
proxy-groups:
- name: "プロキシ選択"
type: select
proxies:
- "自動選択"
- DIRECT
- name: "自動選択"
type: url-test
proxies: []
url: 'http://www.gstatic.com/generate_204'
interval: 300
rules:
- GEOIP,CN,DIRECT
- MATCH,プロキシ選択
移行直後に起きやすい問題と対処
手順どおり進めても、環境差でつまずくことはあります。ここでは報告の多いパターンと対処の方向性を整理します。
事象 1:Dashboard が開かない(ERR_CONNECTION_REFUSED)
多くの場合、external-controller の待ち受けが 0.0.0.0:9090 から 127.0.0.1:9090 に変わっている、またはファイアウォールがポートを塞いでいることが原因です。
対処:設定ファイルで external-controller の値を確認し、ブラウザで http://127.0.0.1:9090/ui など実際の値に合わせてアクセスします。GUI クライアントなら設定内の「Dashboard を開く」に相当するボタンが早道です。
事象 2:ノードがすべてタイムアウト/接続失敗
想定される要因は次のとおりです。
- サブスクリプションが古い:サーバー側のプロトコル更新後、古いリンクのノード定義が無効になっていることがあります。クライアントで「サブスクリプションを更新」を実行し、最新の一覧を取り直してください。
- DNS が解決できない:Mihomo は fake-ip を既定で使うため、
dns.nameserverの指定が不適切だとホスト名解決に失敗します。信頼できる上流 DNS を少なくとも 1 つは明示しましょう。 - システムプロキシが未設定:カーネル単体では OS のプロキシは切り替わりません。クライアントの「システムプロキシを有効化」を使うか、手動で
127.0.0.1:7890を指定します。
事象 3:TUN モードが起動しない
TUN は仮想 NIC を作るため管理者権限が必要です。Windows では管理者として起動するかサービスモードを有効化し、macOS ではシステム拡張の許可を行います。
上級者向け:tun.stack を system のほか gvisor や mixed に切り替えられます。特定環境ではこちらの方が安定する場合があります。
事象 4:ルール読み込みエラー
Mihomo はルール構文の検証が厳しめです。典型例は次のとおりです。
RULE-SETは対応するrule-providersの定義が必須。定義なしでRULE-SET,xxx,DIRECTと書くとパースエラーになります。- ルールセットは有効な YAML または MRS 形式である必要があります。旧コアが黙認していた非標準形式は拒否されることがあります。
- プロキシグループ名に記号を多用しない方が安全です。日本語・英字・数字の組み合わせが無難です。
動作確認とパフォーマンス調整
移行が完了したら、次のチェックで正常性を確認し、必要に応じて軽いチューニングを加えると快適さが増します。
確認の手順
- Dashboard のプロキシ一覧でノードが表示され、常用ノードに対する遅延テスト(Ping)が数値を返すこと。
- ブラウザでプロキシ経由でのみ見られるサイト(例:Google)を開き、表示できること。
- ログに
ERRORやFATALが連続して出ていないこと。 - REALITY や Hysteria2 ノードを使う場合、旧カーネルでは常にタイムアウトだったものが、遅延値を返すこと。
パフォーマンスのヒント
次の設定は実運用で効きやすいです。
- TCP 同時接続(tcp-concurrent):
tcp-concurrent: trueを有効にすると、複数経路への接続を同時に試し、速い方を採用します。 - geodata の自動更新:GeoIP / GeoSite を自動で取り直すと、ルール分岐の精度が保たれやすくなります。
- 選択ノードの記憶:
profile.store-selected: trueにすると、再起動後も前回選んだノードを覚えてくれます。
まとめ:長期的には Mihomo 一択に近い
レガシー Clash Core のアーカイブは、エコシステムの中心が Mihomo に移ったことをはっきり示しています。プロトコル対応の幅、セキュリティ更新の継続性、現代的な設定構文との相性——いずれをとっても旧カーネルを上回ります。
現行クライアントで不満が少ないなら、カーネル差し替えだけでも十分な場合があります。クライアント自体が開発停止(旧 Clash for Windows など)なら、新世代クライアントへまとめて移した方が、その後のメンテナンス負担がずっと少なくなります。
新しいクライアントを選ぶときは、Mihomo を深く統合し、GUI の完成度が高いものを優先するとよいでしょう。サブスクリプション管理、プロキシ切替、TUN のオンオフ、ルール編集といった日常操作に力を入れた製品は、コマンドラインでカーネルだけ動かすより格段に使いやすいです。
本稿で扱わなかった症状が出た場合は、より細かい手順をチュートリアルページで確認するか、推奨クライアントを試してみてください。妥当なデフォルトが最初から入っており、初めて Clash 系を触る方でも短時間で運用を始められます。
カーネル入れ替えや設定の手編集をなるべく避けたい場合は、Mihomo を最初から同梱した Clash クライアントをご利用ください。サブスクリプションはワンクリックで取り込め、数分で使い始められます。ダウンロードページへ進む →